腸内細菌ダイエット 〜食事のカロリーを減らしても太る事実〜

腸内の細菌と人間の身体の関係


体の中心の臓器の内側は空気に触れている場所である。ある意味で身体の外側になりますね。体の皮膚の部分も外側ですが、内側にも外側があります。

そして人の身体も植物(野菜)と同じように、外側から栄養を取り出しています。
食べ物は口の中で噛み砕かれて、唾液により分解し、胃に運ばれて酸性の胃液で分解されて小腸に行き、更に消化酵素により分解されて身体を保つための栄養分を吸収します。

栄養分って身体が勝手に吸収をしてくれているというイメージが強いと思いますが。実は、腸内にいる微生物が食べ物から栄養成分を引き出してそれを吸収しています。
ですから腸内にいる細菌の組成によって吸収する栄養素の内容は変わってしまいます。
これって野菜が土壌から栄養を吸収する方法と似ています。土壌の成分を微生物が分解したものを吸収する。その代わりに微生物が生きていられるように根から養分を与えてあげるという共創関係が結ばれています。

腸内にいる細菌で行動が変わる!?


人間の腸内にいる細菌も生育する場所がなくなっては困るので、人間の身体を保つのに協力してくれています。
(一部の細菌は搾取するだけ搾取して、下痢を誘発して次の宿主を探すという戦略をとるみたいです。(コレラ菌など。))

それに加えて細菌は、人の行動を制御することもできる、という事も最近の研究では分ってきているようです。
例えば自閉症児にはクロストリジウム属の細菌が健康児に比べて10倍も多くいたり、猫から感染するトキソプラズマの保菌者は交通事故を起こしやすかったり、統合失調症の有病率が普通の人の3倍だったりするデータもあるそうです。
そして幸せを感じるホルモン、「セロトニン」を生成するトリプトファンを破壊してしまう免疫系の過剰反応を抑えるための細菌の組成でないと、うつ病にもなりやすくなってしまいます。

腸内細菌をコントロールできれば、ダイエットも簡単!?


腸内にいる菌で自分自身の行動が左右されてしまうだけでなく、太りやすさや痩せやすさも関係してきます。

よくカロリーの摂りすぎ、カロリー消費の無さすぎが太る原因と言われていますが、実際はカロリーのその計算が太っている事と痩せている事の原因にはならないという事がいくつかの大規模調査で明らかになっているそうです。

そして遺伝が原因という説も実は間違っており、体重増加に作用すると思われている遺伝子は32個しかなくて、これらの影響を最も受けている人と、最も受けていない人の体重差は平均して8kgしかないようなのです。これが正しいとなると太りやすいのは遺伝という言い訳は通用しませんね。(笑)

そして多くの人が勘違いしている事があって、小さな体、痩せている体を維持するより大きな体、太っている体を維持する方が多くのエネルギーを使うので、太っている人の方が基礎代謝は高いのです。
代謝を上げれば痩せるというのも事実ではないかもしれません。

実は腸内細菌の組成比の違いで、食べ物からどのぐらいの栄養素を分解して取り出すかが違っています。
それに加えてこういった微生物が人の遺伝子にエネルギーを脂肪細胞に貯蔵するように命令しています。
脂肪細胞は増えると困った事があります。食欲を抑制するためのレプチンというホルモンは脂肪細胞から分泌されます。
実は脂肪細胞が増えるレプチンの量も増えて、ホルモン過剰でそのホルモンに対しての耐性を脳の受容体がつけてしまい、満腹になりづらいという点があります。
太るとより多くの食べ物を欲して、そして体を維持するためにより多くのエネルギーを欲してしまうのもこう言った理由のためのようですね。

だから太りにくい体作りはとても大切なのです。

太りにくい体を作るには


太りにくい体を作るには、腸内の細菌の比率を、痩せることが得意な細菌に幅を利かせてもらわないといけません。

細菌の種類で言うと
太りやすい人はフィルミクテス門の細菌が多く、
痩せやすい人はバクテロイデーテス門の細菌が多い。

だからバクロイデーテス門の細菌を増やせば良いという事になります。

バクロイデーテス門の細菌の中で有名なのはビフォドバクテリム属の細菌で一般的にビフィズス菌と呼ばれている菌です。このビフィズス菌を増やすには、フラクトオリゴ糖やアラビノキシランなどの植物繊維を与えると増加し、(食物繊維好き)そして高脂肪の餌を与えると減ってしまうという性質があります。

実際のアメリカ人女性の250人を20ヶ月追跡調査してデータがあって、1000キロカロリーあたり1gの食物繊維を増やすと250g体重が減るという結果になったそうです。
ですから、1000キロカロリーあたり8gの食物繊維をとっていれば、20ヶ月で2キロ減量できるという事になります。

結構簡単に痩せる食生活はできると思いませんか?
食物繊維1gは
ブロッコリーだと1/5株
キャベツだと60g
小麦の全粒粉だと10gぐらい
えんどう豆だと5gぐらい

けっこう簡単じゃないでしょうか?

それに加えて、ビフィズス菌は天然の抗生物質を生成して他の菌の繁殖を抑えるので、クロストリジウム属(こいつらは結構悪さをする!)の細菌も増殖できなくなります。

それにバクロイデーテス門の菌は腸壁を覆う粘膜層を厚くするので、免疫反応を過剰にしてしまうリボ多糖類が血液に入り込むのを防いでくれます。
リボ多糖類は脂肪組織を炎症させて不健康な体重増加を誘発してしまうので、そのまま血中に入るのは良くないのです。

だから痩せたい、免疫の過剰反応(アトピーや自己免疫疾患)を抑えたいと思ったら、そういった方向に体を変化させてくれる腸内細菌を増やす餌をあげて腸内で培養すれば良いのです。人間も野菜と同じで土壌(腸内環境)を自分の生育に都合の良いように育ててあげることが重要なのです。

腸内の環境を乱す「抗生物質」


最後に、こんなに大切な腸内細菌のバランスをかき乱す原因の一つに抗生物質があります。抗生物質は良い菌も悪い菌も一旦殺してしまいます。

2歳前に抗生物質を与えられた小児は8歳になるまでに、喘息を発生する率が2倍近く高く、皮膚炎、花粉症も発症しやすい。 (2013年イギリス プリストル大学の研究)
そして抗生物質投与後に、クロストリジウムディフィシル感染症になる人もいるようです。

Clostridium difficile感染症と院内感染対策について

抗生物質は適切に使えば、最良のクスリだが、ただ心配というだけで、処方されたから飲むという事を簡単にしてしまうと、腸内の環境を乱すだけの毒にもなりかねません。ウイルスに抗生物質が効かないという事を意外と知らない人が多いので、インフルエンザに感染しても抗生物質で治ると思っている人がいます。

抗生物質は必要な場合には必要なものなので、飲んだ後の食生活は大切になってきます。
飲んだ後はできるだけ、高脂質のものは避けて繊維質(フラクトオリゴ糖が多ければより良い)の物を摂取した方が、増やしたい腸内細菌の回復も病後の回復も早くなり、余計な感染症を併発しなくなる可能性は高くなると思います。

まとめ


腸内細菌は人の健康や、健康的な生活をするのにとても大切な役割を担っています。
健康でいるためには、何を食べなければいけないのか?という視点ではなくて、自分の体を健全に保ってくれる腸内細菌を増やすためには何の餌を与えれば良いのか?という視点で食べ物を見ると、食べたい物が変わるかもしれないし、無駄に食べることが減るかもしれませんね。

参考文献
あなたの体は9割が細菌 アランナ・コリン著
腸と脳 エムラン・メイヤー著

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