多様に使われているステロイド剤
ステロイド剤(人工副腎皮質ホルモン)は、強い消炎作用(炎症を抑える作用)を持っていて、とても便利な薬として使われています。
外用薬としては、皮膚トラブル、痔、喘息吸入器、花粉症、鼻炎用スプレー、目薬、虫刺され痒みどめスプレー。
内服薬としては潰瘍性大腸炎、クローン病、消化器系、再生不良性貧血、溶血性貧血、膠原病、リューマチなど。
外科的には、腱鞘炎、五十肩、ひざ痛などにも使用されているようです。
これを見ても、痒みや痛みを消す薬としてはとても便利なのはわかります。
炎症している部位はとても多くの活性酸素が発生していて、その活性酸素を除去してくれるのが、ステロイド。これを使うとすぐ炎症が治まってしまうのです。
自然治癒で炎症を治そうとするメカニズム
皮膚などにトラブルが発症すると、神経を通じて脳に痛みや痒みという信号が伝達し、脳から脳視床下部(向下垂体ホルモン)→脳下垂体(副腎皮質刺激ホルモン)→副腎という経路をたどり、最後に副腎皮質ホルモン分泌が行われる。
その副腎皮質ホルモン(天然のステロイドのコルチゾル)が患部に届き痒みや痛みを抑えるということになります。
このような経路の働きが通常です。
そして、コルチゾルは1日平均10mgという分泌量で、その全部が皮膚トラブルに使用されるわけではなく、血圧の調整や水分代謝、血球の数の調整など、ストレスに対応するためなどに使われています。
ですから、皮膚にトラブルがあっても、実際に使われるコルチゾルの量はほんのわずかという事です。
コルチゾル(天然ステロイド)の生理活性(効力)を1とした場合、デキサメタゾン(合成ステロイド)の生理活性は25となっています。
(Revview of Medhical Physiology Willam F.Ganong著による)
そしてデキサメタゾンはステロイドのランクの分類で一番弱い(weak)に入ります。
デキサメタゾンはウナコーワ、ムヒ、など虫刺されの痒み止めに使われています。
ステロイドのランクは
weak
↓
medium
↓
strong
↓
very strong
↓
storongest
と強くなります。
そして最強のステロイドの生理活性は、コルチゾル(天然ステロイド)の1000倍以上となるようです。
それなら、塗布すればすぐ症状は治まるという事は納得できると思います。しかし、皮膚のトラブルが起こる痒みを人工の副腎皮質ホルモン(ステロイド)で治すことを続けるとどうなるか。天然のコルチゾルに比べて効力が強いステロイドを使用すると、炎症物質を抑えても、必要以上に体に残ってしまう。
そうすると、消炎に使われなかったステロイドはどんどん体に蓄積してしまいます。
蓄積したステロイドの身体への影響
体に蓄積したステロイドが今度は酸化ステロイドとなって、活性酸素を発生させてしまうので、ステロイドを塗布した部位はまた炎症してしまう。そしてそこにステロイドを塗ると、更に多くのステロイドが残り、酸化ステロイドとなり、更に多くのステロイド剤、もしくは強力なステロイド剤が必要となり、それを続ける事で活性酸素による炎症作用が止まらなくなってしまいます。
それとは別にステロイド使用による脳への悪影響もあります。痒みが生じても、脳は身体にステロイド剤が残留している状態なので、自らステロイドを分泌しなくなります。
脳はパニック状態になると他のホルモンコントロール機能も正常でなくなってしまいます。成長ホルモン異常や、性ホルモン異常などを起こします。そしてそれが続くと、自律神経のコントロールもおかしくなってしまいます。
自立神経失調症という状態です。
そうなってしまうと、静かにしているのに急に心臓がドキドキしたり、真夏の暑い盛りに急に寒気を感じたりという事が起きます。
このように本来持っている自分自身の恒常性(体の均衡を保つ力)の働きを阻害する事になるのが、ステロイドの副作用でもあります。
ステロイドの使い方を考える
ステロイドを使い続ける事により、自ら副腎皮質ホルモンを分泌させる事ができなくなる上に、ステロイドが原因による皮膚炎や炎症が発生し続ける事になってしまうという結果になってしまいます。
こういった事から、ステロイドは一時的に炎症を止めるという事に絶大な効果を発揮するという事はわかりますね。
しかし、炎症した本当の原因を無くすという効果はなさそうだという事もわかります。
ですからステロイドは瞬間芸(対症療法)的に使うのが正しい使い方です。
ステロイドを長期的に使うことが一番危険です。長期的に使うと、体が正常に機能する事が出来なくなります。
続き:「脱ステロイドは本当に辛い!!どうやったら脱ステロイドできるのか?」
参考文献:アトピー悪化への道治癒への道 吉野丈夫著
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