無農薬の野菜を作るのは結構大変!
「慣行農法で農薬を使い、環境を汚染するなんて信じられない。」
「市場には、農薬を散布した野菜たちを出荷して、自分たちで食べる野菜には農薬を散布しない無農薬の野菜を食べるなんて!」
「遺伝子組み換えの野菜を育てているなんて恐ろしい」
などなど、自然派と呼ばれる人にとっては疑問が多いことでしょうけれど。私も、無農薬の野菜や有機栽培で作られた野菜を自分で買って食べているときはそう思っていました。
しかし自分で、無農薬で栽培してみると、除草剤を使う、使わないでその労力の違いたるや格段の違いがあります。
形を綺麗に、虫喰いをゼロにしようと思えば農薬も散布したくなるし、生育をよくして、キロ数を稼ごうと思えば化成肥料も使いたくなる気持ちはわかる。(キロあたりいくらという計算なので。)こういった農法をするのも、形が揃ってボリュームがあり、虫食いで穴も空いていない野菜を欲しているのは消費者だからなんだな、と思いました。
もし、農薬や化学肥料を否定するなら、そういったものは買わなければいいですし、買わなければそういった食べ物は市場には出て行かないし、売れなければ農業に携わる人も作らなくなるのも事実です。しかし、農薬とか化学肥料とか除草剤(枯葉剤)などで一番の健康の被害を受けているのは、食べる人よりそれを作る農業従事者ですし、その周辺に住む住民だと思います。
実際に濃度が濃いと人が死ぬような農薬を、土壌散布し、「これ吸いすぎると、中毒死するよ。」と言いながら、農薬を散布しないといけない。
そういった生活をしないと成り立たない人が大勢いると思います。
農薬はどのくらい撒かれている?
農薬を出している化学薬品メーカーの説明書にも、“ちゃんとマスクをして、全身ちゃんとガードして散布してください”と、記載されています。
農薬を散布する時期というのは、虫たちがわさわさ活動する夏場が多いので、夏場の暑い時期にそんな格好になんてなりたくもないので、普通の姿格好でみんな農薬散布をしている事が多いです。そうなると、自分を犠牲にしているのは農夫自身である一方、その状況を作り出しているのは、消費者である私たちというのも事実なのです。
最近は農薬の回数を減らして減農薬とかエコファーマーとか、農薬の回数を減らして、それを表示する食品も増えてきています。
県の推奨の農薬の回数の半分以下とは言うものの、例えば愛知県の農薬散布の慣行レベルというのは、
- トマト(露地)31回
- トマト(施設(ハウス))27回〜30回
- ナス(露地)33回
- ナス(施設(ハウス))60回
- ジャガイモ13回
- 玉ねぎ29回
など、慣行農法は基準の回数が決まっています。
その回数の半分でも多いのでは?と思ってしまうのは、無農薬で野菜を栽培しているからなのかもしれませんが・・・。トマトの栽培期間が6ヶ月だとすると、週に一回は散布するイメージですね。特にハウスの中で散布する場合は、農薬の逃げ場が少ないことが多いので散布する人が被曝する時間が多くなると考えられます。
野菜の被曝よりも、栽培する人の被曝の方が心配ですね。
「絶対安全」という農薬はない
農薬の回数を減らすために、最近は土壌から野菜に吸収させるもの、土壌に隠れている虫を殺すための土壌消毒など、土を薬品で汚染する方法もあるので、表面についた農薬を落とす落とさないの問題ではないと思います。
土壌に散布された農薬(特にネオニコチノイド系の水溶性のもの)は地下水に浸透されやすいので、土壌汚染の原因にもなり得る事も指摘されています。
それに、もし農薬の散布を減らすという目的のために、1回の散布する薬剤の強さが強くなり、野菜にその薬品を吸わせていたら、目先の目的のために本当の目的である安心、安全という事からかけ離れていってしまうと思います。
テクノロジーと共に、人には無害の農薬になっているのでしょうか?
特定の虫だけを殺して、人と環境には害がない、という農薬が理想です。
しかし、一方で虫や植物の世代交代の速さと毒物(=農薬)への耐性をつける能力が高くなっており、より効果の高い農薬と生物の生命力のイタチごっこにならなければ良いなと思っています。
個人的には、もっとテクノロジーが進化して、虫個体認識のできる、小型のロボットが常に畑を周回していて、1日中虫を捕殺してくれるといいなと思ってしまいます。(笑)
生き物は耐性を獲得するため、だんだん効果がなくなっていく
以前研修先で見た資料で、遺伝子組み換えの植物(麦)を育てるために、雑草防除のために除草剤を使うのですが、(遺伝子組み換えと除草剤はだいたいセット)数年すると、その排除の対称になっている植物が、除草剤への耐性がついて除草剤を撒かれても生長してしまう。虫も殺虫剤を撒いていても、一旦は減るのですがすぐに増えてしまい、結局は、無農薬の圃場と変わらないくらいの個体数になってしまうというデータもありました。
ですから薬を常に散布し続けないといけなくなってしまうという現状になる傾向にあります。
虫も自分の遺伝子を残すために、攻撃されればされた分だけ繁殖して数も増え、温暖地域では次世代もそのシーズンの中でまた生まれて生殖する・・・を繰り返す事ができるので、耐性を獲得しやすいようです。
植物や虫は遺伝子を残すという事に必死です。
自分だけではなく自分たちの種を未来に残す事に全力のように見えます。
ある意味、未来を見ているし、自分ではない次の世代を見ているようにも思えます。
人間も自分たちの遺伝子(生態的にも、文化的にも)を残そうという意思が、虫や植物たちのように強くなると、もう少し未来の人類にとって優しい選択ができるようになるのではないかと思ってしまいますが。
経済合理性の中で暮らす現代の人間と虫や植物の知性のどちらが優れているのかよくわからない昨今です。
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