「○○できて、いい子だね」とばかり言っていませんか?
ほめる子育てを推奨する人はいます。
子どもはほめると、ほめる方向に能力が発達するみたいです。
親が子どもをほめる時は、往々にして親の希望を満たす行動をしてくれる時や親の希望以上の行動を示す時だったりするのではないでしょうか?
しかし、もしそのほめるという事で子どもの可能性が奪われたらどうだろうか?将来生きづらさを感じる大人になる原因を作ってしまったらどうだろうか?
「いい子だね」とほめる
「○○をしていい子だね。」という母親が発するメッセージの中には
「○○しないと悪い子。」という裏の意味も隠されています。
そこにはつまり、いい子は受け入れられるけど、悪い子は受け入れられない。という意味にも受け取れます。
母親は「いい子=受容する」というご褒美を子どもに与えて子どもをコントロールしようとしてしまいますが、これは感受性のいい子にとったら脅しにもなりえます。
この脅しを受け取る子どもは、いい子でいようとするために、母親やほめてくれる人の顔色を伺うことになります。ほめてくれる、認めてくれる親の価値観に従って行動するために、本来の自分らしさを失ってしまい、その狭い価値観の中でしか生きられなくなります。
本来の自分を認めてくれない親。
こういった条件付きの受容や無条件では母親や父親が受け入れてくれない、愛してくれないという感覚は母子の一体感や基本的信頼感を揺るがすものです。
だから子どもは更に「いい子」と言って欲しい、受け入れて欲しい、愛して欲しいという不安感、生存を脅かされる恐怖感から母親の言うことを聞くようになります。褒められるように母親や父親の思考を先読みします。
それを繰り返すとどうなるでしょうか?
ほめるという餌をもらえないと怖いので、いつもほめてくれる人や周りの目を気にして、何かを決める時も他人の価値観を優先してそれに合わせるようになってしまいます。自分が本当に感じている感情を押し殺すようになり結局は自分が無くなり、自分の感覚が信じられなくなります。そうすると子どもなのに、感受性が弱く表情や自己表現に乏しくなりがちになります。
そのように育つと上に忖度(そんたく)下のものに威張り散らす大人が出来上がるのではないかと思います。
ほめられる事による硬直化マインドセット
「賢い子だね。」「才能があるね。」と言われて特別な能力に恵まれているといったほめ方をされる子どもは、人から賢いと思われている事が重要で、才能がある事が重要なので、一生懸命努力する事を恐れるようになる子もいます。
頑張るのは賢くない人のする事。努力して達成するのは才能がない人のする事と思い込みます。そして賢い子、才能がある子。という評判を失う事を恐れてしまうので、無意識に努力や一生懸命する事を避けてしまいます。
そして更に良くないのが、このような硬直マインドセットを持っていると、生まれつき賢い、生まれつき才能がある。と思いこんでいると、簡単にうまくできない達成できない、成功できないとすぐに挑戦をあきらめてしまう事になりやすいらしいのです。
では、ほめてはいけないのか?というとそうでもない。
ほめるなら子どもがやった「過程」をほめる事が重要らしい。
問題や課題をやり遂げた「結果」ではなく、「過程」をほめてあげるという方法だ。
生まれつきの能力としてではなく、努力をするプロセスに焦点を当ててほめてあげます。こういう方法で育った子どもは、努力は良いものだと理解し、努力により知性も磨かれて成長すると思っている。そして失敗に直面した時も諦めずにさらに頑張って努力して新しい方法や戦略をとろうとする。
C・Sドゥエック教授の研究
生徒にある課題を与えてその課題の達成に対して
- A群は「こんな難しい問題を解くなんて君は頭がいいね。」と褒め
- B群は「こんな難しい問題を解くなんて一生懸命頑張ったね。」と褒める。
そのあと、私の知性は定められているので、自分の力では変えられないという内容の文章を読ませて賛同するかどうか答えてもらったところ、A群のほうが賛同数が多かった。
頭の良さをほめられた生徒は知性は先天的な資質で、不変なものと答え、努力をほめられた生徒は、知性は努力によって進化すると考えた。
その後、頭の良さを褒められた生徒は優しい課題を選び、それはおそらく確実に点を取りたいという理由だと推測された。努力を褒められた生徒は学習できるチャンスがあることから難しい課題を選ぶ傾向があった。
頭の良さを褒められた生徒は問題につまずいた途端に自信と楽しむ気持ちを失ってしまった。「生まれ持った賢さ=成功」の硬直したマインドセットのため、つまずくことは成功者ではないことを意味してしまうのだ。
そして、B群の成長のマインドセットの子どもは、自信を失わず、問題を解こうとする意欲を持って取り組むことができた。
ほめるという事は、どこに焦点を当ててほめるのか?という事がとても重要のようです。
親や誰かに言われる言葉は、子どもにとってはとても影響力があります。子どもは親に言われたことに、つじつまを合わせるように行動をとってしまうという事もあると思います。
だから、「この子は引っ込みじあんなのよ」とか「この子はわがままなのよ」とか言われて育った子は、無意識にその親のレッテルに自分を合わせてしまう硬直マインドを持ってしまうという事でもあると思います。
それに親が自分の子どもにするこのようなレッテル貼りはかなりの頻度でされているので、親がする幼い子どもへのレッテル貼りは洗脳に近いのではないかと思います。
そのように育ってしまうと、新しい行動を起こそうとした時、親から貼られたレッテルに合わなそうならやってみようとさえ思わない(=最初からあきらめる)子どもになる事が多く、余計に親のレッテル通りの自分になってしまうと思います。
大切な事はその子という存在を認めてあげる事
「できた!」という結果だけに注目してほめるのではなく、そのできるまでの過程をほめるという事は、その子の思考の過程や、その子が経験した時間を認めてあげるという事だと思います。それはその子の生きているすべての存在をちゃんと見ていると暗に伝えていると思えます。
逆に結果を褒めることや、レッテル貼りをする事は、その子のたまたま表現をした一面を見ているだけであってその子の持つ多面的な可能性、表現しうる可能性のあるものを切りすてて合理的に表現しているだけなので、部分的にしか見られていないという感じを子どもにも与えてしまうのではないでしょうか?
親に自分の全存在(可能性も含めて)を受容してもらえる事が、その子の心の安定にもつながり自分の感情や感覚を信じられる人間になるのではないかと思います。
しっかりと見守ってあげないと子どもはあっという間に成長する
子どもにかける言葉って本当に難しいなあ。と思ってしまいます。
小さい頃は親に対する注目や集中力は本当にすごいですから・・・。
ほめる事に対して親が隠している本当の意図を子どもには読まれていると思います。素直な子どもはその意図を読みとって親に好かれようと自分の気持ちを殺してまで行動するから、親の観察力や言葉の使い方は重要なんだなと感じます。
やはり親は自分自身にも子どもにも正直が一番。なんだと思います。
参考図書
- 褒めない子育てで子どもは伸びる 岸 英光著
- デンマークの親は子どもを褒めない ジェシカ・ジュエル、他著
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